1月25日(水)
この日、以前から度々参加させて頂いている、早稲田大学 ファッション/社会文化研究会の講演会
この日、以前から度々参加させて頂いている、早稲田大学 ファッション/社会文化研究会の講演会
に行ってきました。
余談ですが、こちらの研究会は、田口淑子 氏(編集者、元『ミスターハイファッション』『ハイファッション』編集長)と酒井紀幸 氏(早稲田大学文学学術院教授)を筆頭に、
有志学生による
「ファッションを社会文化のひとつとしてとらえ、幅広いパースペクティブを持って考察し、社会へと発信していくこと」を目的として結成されています。(一部HPより抜粋)
余談ですが、こちらの研究会は、田口淑子 氏(編集者、元『ミスターハイファッション』『ハイファッション』編集長)と酒井紀幸 氏(早稲田大学文学学術院教授)を筆頭に、
有志学生による
「ファッションを社会文化のひとつとしてとらえ、幅広いパースペクティブを持って考察し、社会へと発信していくこと」を目的として結成されています。(一部HPより抜粋)
早稲田大学 文化構想学部 複合文化論系
ファッション/社会文化研究会 HP
http://www.fukugo-waseda.jp/archives/events/2011/0119-673.html
今年度 最後となったゲストは、今東京シーンで独自の道を貫き続けている「matohu」のお二人でした。
直営店のオープン、青山スパイラルやオペラシティでの展示など、常に話題に尽きないブランドの1つでもあります。
ここで簡単にですが、matohuのご紹介も。
2005年、堀畑裕之と関口真希子が設立。
ブランド名には「纏う・待とう」の意味が込められ、「日本の美意識が通低する新しい服の創造」をコンセプトとする。
2006年、東京コレクションに初参加。
デビュー時に5年間10シーズンのテーマ「慶長の美」を発表。慶長年間(1596~1615年)の美術・工芸・文化を探求、その精神をくみ取って服に落とし込んだ。
2009年毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。
2010-11年A/Wからは、第2期のシリーズコレクション「日本の眼」をスタートさせた。
HP
http://www.matohu.com/
そして第10回を迎えた今回の講演会テーマは、
「日本の美、その普遍性と同時代性」です。
変に説明的ではなく、途中に映像なども交えて、今までとこれからを語って下さいました。
終始 穏やかな雰囲気と、心地良い緊張感と、独特の間を感じました。
以下、要点をまとめつつ、振り返りつつ書きたいと思います。
まずは、お二人の出会いとブランド設立までの経緯。
これまでコレクションをチェックしたりなど、基本的なブランド情報は知っていたのですが、小話も含めてご本人たちから語られ感じられるその背景は新鮮でした。
堀畑氏は、大学時代にドイツ哲学を専攻し、弓道部に所属(!)
文化時代は、デザイナーというより職人になりたかったそうです。
関口氏は、大学時代に社会科学部の中でも法律を専攻。
学生時代は、帰りの電車賃しか無くなるくらい映画(特に古い時代のもの)を観まくっていたそうです。
ちなみに卒論のテーマが、当時はセンセーショナルであった「性同一性の人権」で、後にそれが世で認められ、ある種の使命感の達成を感じた、と仰っていたのが印象的でした。
その後は、元々叔母の影響で服作りが身近だったことから文化服装学院に入学。
お二人は基礎科で意気投合し、メンズコースを卒業するまでの間、舞台衣装や装苑賞などのコンテスト活動に明け暮れていたそうです。
ただこの時、特にユニットを組んだり、将来ブランドをやるとは考えていなかった、と。
また、同期にISSEY MIYAKEの宮前氏やSOMARTAの廣川氏など、現在も第一線で活躍される方々の存在も大きかった、と言っていました。
卒業後はご存知の通り、堀畑氏はCOMME des GARCONS、
関口氏はYohji Yamamotoのパタンナーとして勤務。
ここでの経験は、
「今でも大きく、とても役に立っている」のだそう。
そして働いている間は、
「人と違うことが見つかれば、何かを始めるつもりだった」
「自分のセンスを混ぜたようなものだったらやるつもりはなく、会社に勤めている方がよっぽど良いと思っていた」
しかし そんなある日、日常的に着物を着ている関口氏が堀畑氏に着物を買ってきたことから、物語は動き始めました。
彼は自身で着てみて初めて、日本の民族衣装でもある着物特有のラインや着心地、テキスタイルやその希少性に衝撃を受け、
「日本人が培ってきた美意識をファッションに取り入れたい」、と考えるようになり、
そこから本格的に関口氏と長い構想に入ることになります。
2003年、お2人は退社し、渡英。
この理由については複数あるそうですが、一度日本から離れることで自国を客観的に観るためであり、
語学を学びながら英ブランドで働き、1年間かけてコンセプト等を練ったそうです。
後にこれは正解だった…、と仰ってました。
ここから今に至るまでのめざましい活躍は言うまでもありません。
そして、matohu 慶長の美 09-10A/W かぶき者のDVD映像を鑑賞。
http://www.matohu.com/keicho/09aw/index.html
内容についてはここでは割愛させてもらいますが、数ある中でも強い思い入れとメッセージみたいなものが特にあるのかな、などと勝手に思ってしまいました。
次に、今回の講演会テーマでもあった「普遍性と同時代性」、という部分について。
matohuのブランドコンセプトでもある、「日本の美意識が通低する新しい服の創造」
これって言葉にすると簡単そうだけど、実は物凄く深いコンセプトだなーと!!!
そもそも自分を含めた日本人は、常日頃から和服ではなく洋服に接して着ているわけであって、自国である日本の美意識を明確に答えられる人って、果たしてどれだけいるのか?
そしてそれをファッションに取り入れるって、今までもあっただけに下手したらニワカで、それこそなんちゃってなテイストになりかねないというか、結構リスキーなテーマだと、僕は思うのです。
しかし、その辺についてはある種 正攻法な、とても真摯かつストレートに掘り下げていくようです。
「昔に作り出された人々の技術、価値観や美意識を単になぞるのではなく、服へ変換する」
「毎回のテーマに対して文献などをリサーチするのはもちろん、実際に現地に赴きモノに触れ、時には作り、その景色や感情的なものも全て取り入れる」
これが「普遍性」の部分。
「結局つまるところ、良くテーマとしてやられたり話に聞く、日本の伝統を再現したり目指してるわけじゃなくて、(過去をリスペクトした上での)日本人らしさってものを、自分たちの感動を通して表現したい」
「着物のデザイナーになりたいわけでも、着物っぽいものを作りたいわけでもなくて」
「今、世界中の人たちがインターネットなどで通じて、同じものが見れたり買えたりする。
でもその中で本当に面白いものは、価値の多様性」
「それぞれの国の人々がモノの見方を、同時代で同じ気持ちを共有できたら面白い」
きっとここが「同時代性」の部分。
そしてこのコンセプトにも通ずる、
”日本の美意識が宿った新しい服”にあたるのが、ブランドを象徴する「長着」=お2人の1つの答え、…なんだなーと!
この「長着」にも”形を変えない(定型)”というコンセプトがあって、
「生地などで変化をつけたり、組み合わせ次第で無数に着こなせる」、というもので、
「実は流行に対するアンチテーゼでもあり、”変わらないけど新しい”モノを目指す」
さらに、「ブランド名の”matohu=纏う / 待とう” は、
ファッションデザインというよりも、”コンテンポラリーウェアラブルデザイン”=”同時代性を伴ったモノ” 」という解釈だそうです。
正直、聞いている時は色々思考が泳いでしまって、なかなか追いつかない状態だったのですが、今BLOGにまとめていて、やっと頭の中で線に繋がった気がします…(笑)
また、終わりに「普遍性」の部分について言及されていたのが、
「具体的なものを掘り下げた上で、結局それが、今生きている人々の心を打たないと意味がない」
「また今後は、SHOW以外でキチンとコンセプトに沿った発表方法をすることの必要性も感じている」
…という、ザックリとですが内容でした。
僕自身としては、モノ作りやデザイン活動を通しての社会との関わり方って、正直 無数にあると思うんです。
でも、本当に本質的な意味での、人とは違う 新しいモノにたどり着くには、
”matohu”のお2人のように、「極限まで研ぎ澄ませた着眼点」と、「そこまでやるかってくらいの真の掘り下げ」が必要なのかな、と。
これは容易なことではなく、とても難しいですが、生涯を通して やりがいのあることだと、再確認であると同時に、強く強く思いました。
最後になりましたが、この稚拙な長文を読んでくれた全ての人と、
お世話になった社会文化研究会の皆様、特に卒業の方々、
そして何より、講演をして下さった”matohu”の堀畑氏 関口氏に、
この場を借りて深い感謝を申し上げたいです。
素敵な時間と空間だったこと、また余談ですが 堀畑氏に長着を着せて頂いたことは忘れません。
ご静読、どうも 有難う御座いました。
今年度 最後となったゲストは、今東京シーンで独自の道を貫き続けている「matohu」のお二人でした。
直営店のオープン、青山スパイラルやオペラシティでの展示など、常に話題に尽きないブランドの1つでもあります。
ここで簡単にですが、matohuのご紹介も。
2005年、堀畑裕之と関口真希子が設立。
ブランド名には「纏う・待とう」の意味が込められ、「日本の美意識が通低する新しい服の創造」をコンセプトとする。
2006年、東京コレクションに初参加。
デビュー時に5年間10シーズンのテーマ「慶長の美」を発表。慶長年間(1596~1615年)の美術・工芸・文化を探求、その精神をくみ取って服に落とし込んだ。
2009年毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。
2010-11年A/Wからは、第2期のシリーズコレクション「日本の眼」をスタートさせた。
HP
http://www.matohu.com/
そして第10回を迎えた今回の講演会テーマは、
「日本の美、その普遍性と同時代性」です。
変に説明的ではなく、途中に映像なども交えて、今までとこれからを語って下さいました。
終始 穏やかな雰囲気と、心地良い緊張感と、独特の間を感じました。
以下、要点をまとめつつ、振り返りつつ書きたいと思います。
まずは、お二人の出会いとブランド設立までの経緯。
これまでコレクションをチェックしたりなど、基本的なブランド情報は知っていたのですが、小話も含めてご本人たちから語られ感じられるその背景は新鮮でした。
堀畑氏は、大学時代にドイツ哲学を専攻し、弓道部に所属(!)
文化時代は、デザイナーというより職人になりたかったそうです。
関口氏は、大学時代に社会科学部の中でも法律を専攻。
学生時代は、帰りの電車賃しか無くなるくらい映画(特に古い時代のもの)を観まくっていたそうです。
ちなみに卒論のテーマが、当時はセンセーショナルであった「性同一性の人権」で、後にそれが世で認められ、ある種の使命感の達成を感じた、と仰っていたのが印象的でした。
その後は、元々叔母の影響で服作りが身近だったことから文化服装学院に入学。
お二人は基礎科で意気投合し、メンズコースを卒業するまでの間、舞台衣装や装苑賞などのコンテスト活動に明け暮れていたそうです。
ただこの時、特にユニットを組んだり、将来ブランドをやるとは考えていなかった、と。
また、同期にISSEY MIYAKEの宮前氏やSOMARTAの廣川氏など、現在も第一線で活躍される方々の存在も大きかった、と言っていました。
卒業後はご存知の通り、堀畑氏はCOMME des GARCONS、
関口氏はYohji Yamamotoのパタンナーとして勤務。
ここでの経験は、
「今でも大きく、とても役に立っている」のだそう。
そして働いている間は、
「人と違うことが見つかれば、何かを始めるつもりだった」
「自分のセンスを混ぜたようなものだったらやるつもりはなく、会社に勤めている方がよっぽど良いと思っていた」
しかし そんなある日、日常的に着物を着ている関口氏が堀畑氏に着物を買ってきたことから、物語は動き始めました。
彼は自身で着てみて初めて、日本の民族衣装でもある着物特有のラインや着心地、テキスタイルやその希少性に衝撃を受け、
「日本人が培ってきた美意識をファッションに取り入れたい」、と考えるようになり、
そこから本格的に関口氏と長い構想に入ることになります。
2003年、お2人は退社し、渡英。
この理由については複数あるそうですが、一度日本から離れることで自国を客観的に観るためであり、
語学を学びながら英ブランドで働き、1年間かけてコンセプト等を練ったそうです。
後にこれは正解だった…、と仰ってました。
ここから今に至るまでのめざましい活躍は言うまでもありません。
そして、matohu 慶長の美 09-10A/W かぶき者のDVD映像を鑑賞。
http://www.matohu.com/keicho/09aw/index.html
内容についてはここでは割愛させてもらいますが、数ある中でも強い思い入れとメッセージみたいなものが特にあるのかな、などと勝手に思ってしまいました。
次に、今回の講演会テーマでもあった「普遍性と同時代性」、という部分について。
matohuのブランドコンセプトでもある、「日本の美意識が通低する新しい服の創造」
これって言葉にすると簡単そうだけど、実は物凄く深いコンセプトだなーと!!!
そもそも自分を含めた日本人は、常日頃から和服ではなく洋服に接して着ているわけであって、自国である日本の美意識を明確に答えられる人って、果たしてどれだけいるのか?
そしてそれをファッションに取り入れるって、今までもあっただけに下手したらニワカで、それこそなんちゃってなテイストになりかねないというか、結構リスキーなテーマだと、僕は思うのです。
しかし、その辺についてはある種 正攻法な、とても真摯かつストレートに掘り下げていくようです。
「昔に作り出された人々の技術、価値観や美意識を単になぞるのではなく、服へ変換する」
「毎回のテーマに対して文献などをリサーチするのはもちろん、実際に現地に赴きモノに触れ、時には作り、その景色や感情的なものも全て取り入れる」
これが「普遍性」の部分。
「結局つまるところ、良くテーマとしてやられたり話に聞く、日本の伝統を再現したり目指してるわけじゃなくて、(過去をリスペクトした上での)日本人らしさってものを、自分たちの感動を通して表現したい」
「着物のデザイナーになりたいわけでも、着物っぽいものを作りたいわけでもなくて」
「今、世界中の人たちがインターネットなどで通じて、同じものが見れたり買えたりする。
でもその中で本当に面白いものは、価値の多様性」
「それぞれの国の人々がモノの見方を、同時代で同じ気持ちを共有できたら面白い」
きっとここが「同時代性」の部分。
そしてこのコンセプトにも通ずる、
”日本の美意識が宿った新しい服”にあたるのが、ブランドを象徴する「長着」=お2人の1つの答え、…なんだなーと!
この「長着」にも”形を変えない(定型)”というコンセプトがあって、
「生地などで変化をつけたり、組み合わせ次第で無数に着こなせる」、というもので、
「実は流行に対するアンチテーゼでもあり、”変わらないけど新しい”モノを目指す」
さらに、「ブランド名の”matohu=纏う / 待とう” は、
ファッションデザインというよりも、”コンテンポラリーウェアラブルデザイン”=”同時代性を伴ったモノ” 」という解釈だそうです。
正直、聞いている時は色々思考が泳いでしまって、なかなか追いつかない状態だったのですが、今BLOGにまとめていて、やっと頭の中で線に繋がった気がします…(笑)
また、終わりに「普遍性」の部分について言及されていたのが、
「具体的なものを掘り下げた上で、結局それが、今生きている人々の心を打たないと意味がない」
「また今後は、SHOW以外でキチンとコンセプトに沿った発表方法をすることの必要性も感じている」
…という、ザックリとですが内容でした。
僕自身としては、モノ作りやデザイン活動を通しての社会との関わり方って、正直 無数にあると思うんです。
でも、本当に本質的な意味での、人とは違う 新しいモノにたどり着くには、
”matohu”のお2人のように、「極限まで研ぎ澄ませた着眼点」と、「そこまでやるかってくらいの真の掘り下げ」が必要なのかな、と。
これは容易なことではなく、とても難しいですが、生涯を通して やりがいのあることだと、再確認であると同時に、強く強く思いました。
最後になりましたが、この稚拙な長文を読んでくれた全ての人と、
お世話になった社会文化研究会の皆様、特に卒業の方々、
そして何より、講演をして下さった”matohu”の堀畑氏 関口氏に、
この場を借りて深い感謝を申し上げたいです。
素敵な時間と空間だったこと、また余談ですが 堀畑氏に長着を着せて頂いたことは忘れません。
ご静読、どうも 有難う御座いました。